プロジェクト紹介

100周年プロジェクト

※この記事は2019年11月に取材したものです。記事中の内容や社員の部署・役職は取材時のものです。

1.プロジェクトの方針と背景

静鉄グループ 2017年秋、「創立100周年記念事業プロジェクト」が発足。ともすればセレモニーに終始しがちな周年事業とは一線を画し、「次の100年をどうしていくか」が主題に掲げられました。その伏線には、グループ中長期経営ビジョンに準じて実施した「社是」の変更が挙げられます。
変えてはならないはずの社是に「挑戦」の二文字を加え、しかも最上位に据えた理由。それは、激動する次の100年においても、静鉄グループが地域になくてはならない存在として使命を果たし続けなければならないこと。そして、それには、現状に甘んじることなく挑戦し、成長し続けることが必要だと考えているからです。こうした背景のもと、「3つの核」を定めることからプロジェクトはスタートしました。
※静岡グループの社是について

2.プロジェクトの「3つの核」

❶ 創立100周年社史の刊行
過去の歩みを知らずして、現在の課題を解決し、今後の方針を打ち出すことはできません。プロジェクトメンバー10名のうち4名が専任となり、正確を期した300ページ超・厚さ2cm余りの社史の編纂に努めています。
❷ CSV(Creating Shared Value)の推進
「CSV」は「共通価値の創造」と訳される経営学の最新理論。この理論を具現化する「オープンイノベーションプログラム」(詳細は後述)を実施しています。オープンイノベーションとは、自社だけで取り組むのではなく、法人・団体・個人起業家など外部のアイデアを組み合わせてイノベーションを起こすこと。そのプログラムの企画・運営に、6名のメンバーが社史編纂と兼務で当たりました。
❸ 静鉄ブランドの再構築
ロゴマークやタグラインなどを一新したブランドに、静鉄グループの未来を託し、お客様への発信を開始しました。この業務は当時のブランディング推進課(現:広報・ブランディング課)が担当しました。
※静鉄ブランドについて

3.しずおか未来共創プログラム「StartingⅪ」

CSVを進めるため、「StartingⅪ」(スターティングイレブン)という独自のオープンイノベーションプログラムを立ち上げました。静岡ガス(株)、(株)テレビ静岡、当社の3社で共同実施して、「地域の新たな価値創造」「静岡の起業文化の醸成」「地域課題解決への積極的関与」をめざします。
国内外のベンチャーやスタートアップを対象に、静岡・東京・福岡・台湾・浜松の5会場で説明会を開催。フタを開けると目標をはるかに超える協業アイデアが寄せられ、内容も想像以上のレベルでした。選考やブラッシュアップを重ねて最終的に10案前後に絞り込み、賞金総額100万円を授与して世の中に発表するとともに、地域活性化に寄与する新しいビジネスを創造します。

StartingⅪ

募集テーマ
(募集テーマ外やテーマ横断的な応募も可)

StartingⅪについて

事業会社

静岡鉄道株式会社 静岡ガス株式会社 株式会社テレビ静岡

4.リーダーインタビュー

森田 陸

静岡鉄道総務部
創立100周年記念事業
推進プロジェクトチームリーダー

森田 陸

Q1.静鉄のCSVで大事なことは?

CSVを推進するオープンイノベーションプログラムを100周年プロジェクトに導入しました。その名もStartingⅪ。「Ⅺ」は「×1世紀」を意味します。次の100年に向けて、ということ。さらに「×I(アイ)」というメッセージも込めており、これは一人ひとりが自分事として捉えようということです。この意識を社内にいかに浸透させるか。これがとても大切です。
このプログラムは、外部の小さな会社や個人のアイデアを、当社はじめ主催3社の経営資源と結びつけ、イノベーションを共創する試みですが、もし、そのとき当社が「上から目線」になったとしたら、「一緒にやろう」という意気込みがそがれ、マッチングを阻む壁にもなりかねません。鉄道会社にありがちな保守的な姿勢ではなく、「できる」という前提で、まずやってみる。時代の変化に乗り遅れないよう、まず私たち自身に、「Ⅺ」に込められたメッセージの浸透を図り、「挑戦」の姿勢、意識づけのさらなる醸成につなげなくてはならないですね。

Q2.このプログラムのその他の特徴は?

3社の共催であることもStartingⅪの特徴ですね。強力なメディアを持つテレビ静岡さん、当社とは異分野のインフラ企業の静岡ガスさんと組みました。オープンイノベーションをやること自体が静岡初だと思いますが、3社で取り組む形態は全国的にも稀少なのではないでしょうか。
また、助言役には福岡の起業支援会社を選択しました。大都市ではなく地方都市での実績を持っていたことが決め手。この機会に拠点間ネットワークを構築したかったことも理由です。実際、県内、首都圏のみならず、九州や海外からのエントリーも目立ちましたよ。

Q3.真の目的は何ですか?

一方、社内の事業部門に対しては、「この指とまれ方式」で巻き込むことにしました。外部アイデアの受け皿となる各事業やグループ会社が、自分事として本気で取り組むことがポイントです。イノベーションの実りを手にすることはもちろんですが、このCSVの真の狙いは、次の100年に向けて静岡鉄道が変わることにほかなりません。優れたアイデアを表彰・発表して終わりではなく、社内・社員の意識を醸成し、会社の新たな仕組みづくりの第一歩にすることです。この出発点を骨太の線にして未来を描いていきたいですね。

Q4.将来、静鉄の一員になる人に伝えたいことは?

他の社員たちと同様、私も人事交流や出向で視野を広げてきました。けれど、それだけでは足りないと感じました。大学が理数系だったこともあり、経営を学び直すことにしたのです。県内の大学院に通って修士号をいただき、東京某大学のビジネススクールに学んでMBA※を取得。卒業後も同窓生の皆さんと勉強会を開き、最新の論文に触れています。その中でCSVを知り、100周年の節目に活かすことができました。また、古民家再生やエリアリノベーション、学生起業支援、台湾との情報交換といった副業も、仕事の傍らいくつか手がけています。公私混同ではなく、公私融合。どの活動も本業に役立っていますからね。
自主勉強にせよ、副業にせよ、これからもっと当たり前のことになります。ワークライフバランスが充実していることで、上記のような活動も積極的に行えるようになります。CSVは、さらに前向きな働き方改革にもつながります。うちの会社、これからもっと変わっていきますよ。
※経営に必要な高度な知識とスキルを得たものに授与される学位。

5.メンバーインタビュー

阿南 雄介

静岡鉄道企画部
社外プロジェクト担当課長

阿南 雄介

Q1.どんな業務を担当していますか?

100周年プロジェクトのメンバーとして、さらには社外プロジェクト担当課長として、StartingⅪのプログラムを動かしています。今後は、アイデアを出してくださった外部の皆さんとの協業に、私自身も参加し、新しいビジネスづくりに携わるかもしれません。
また、100周年プロジェクトとは別に、CSVを浸透させる「小さな実績づくり」にも取り組んでいます。たとえば、本社・グループの社員を対象とした勉強会&懇親会「BBK」の定期開催。何の略かと言うと「ビルの屋上や狭間で、バーベキューしながら、静鉄の未来を語る」。組織を横断して発想・行動しようという呼びかけですね。バーベキューはもうやっていませんが(笑)。

Q2.大変だったことは?

主催3社の連携づくりは簡単ではなかったですね。合意形成からプログラムの進行まで、当社は幹事会社としてリーダーシップを発揮しなければなりませんが、物事の考え方や進め方、組織のあり方などが異なり、このプログラムへの温度差もありました。こうしたギャップを埋めるため、昼の会合はもちろん、夜の懇親会もたびたび開き、しっくりくるまで1年ほどかかりました。
さらに、3社の内部に向けた説明会も、互いの交流を兼ねて開催しました。3社合わせて150名ほど集まってくれ、アイデア受け入れの意識づくりや気運の盛り上げに一役買ったと自負しています。

Q3.個人的な収穫は?

活動を通して多くの方と知り合うことができ、自らのネットワークと知見が一気に広がったと思います。が、それよりも、これからの時代、自分たちだけでは限界があることも、あらためて実感しました。事実、「こんな事業アイデアもあるんだな!」という驚きが得られます。思い込みに捉われない社外と連携し、化学変化を起こして、イノベーションを生み出すという、これまで経験したことのない挑戦にワクワクしているところです。

Q4.どんな影響が生まれていると感じますか?

地域社会に対してはこれからですが、社内・グループ内には、もう影響が出ていますよ。先日、社員たちに社外秘扱いで進行状況を情報開示しました。そして、「受け皿となる皆さんからもアイデアを出してほしい」と。すると早速、若手たちからユニークな考えが集まりつつあります。
社外のアイデア×社内の事業部門による協業成果はもちろん大切ですが、CSV推進の目的は、グループ8,000名のさらなる意識改革にほかなりません。持続的に取り組み続けることが大事ですね。