※この記事は2019年11月に取材したものです。記事中の内容や社員の部署・役職は取材時のものです。
多事業展開を通じて街づくりを推進する静岡鉄道が次の100年を見据えたとき、人口減少や高齢化をはじめ、地方都市がどこも抱える課題から目をそむけるわけにはいきません。静岡をいま以上に魅力的な街にするには? そして、この街で静岡鉄道の存在価値をさらに高める方法とは?
約70万人が暮らす静岡市。しかし、今後もさらに人口減少し、気候もいまの種子島より暑くなり、食生活など暮らし方も一変すると言われています。私たち静岡鉄道も、これまで通りの地域に根ざした企業活動だけでは成り立たないと思われます。
そうした危惧から「いまのうちから対応を」との気運が社内に芽生え、その推進役として人事交流先である東急電鉄から戻ったばかりの大村光一郎が抜擢されました。折りしも100周年に沸き立つ中、手探りでスタートした「プロジェクト11」。目的は「静岡で一番住みやすい11kmを創造する」。11kmとは新静岡駅と新清水駅を結ぶ静鉄電車の走行距離にほかなりません。まさしく沿線街づくりの理想を実現することが目的です。
静岡鉄道
不動産アセットマネジメント事業部
プロジェクト11リーダー
大村 光一郎
まず基本構想をつくること。それには現状を把握しなくてはなりません。静鉄電車の沿線人口、その年齢層や所得レベル、医療や福祉など生活施設の密度…。そもそも沿線の範囲をどう規定すべきなのかもポイントです。世界や日本全国の街づくりを勉強すればするほど、各駅から徒歩10分という従来の沿線定義は時代遅れかもしれません。こうしたリサーチを土台に、静鉄沿線に住む魅力をデザインする。その構想を向こう2年間でまとめる。それも、実現可能な構想にしなくてはなりません。
構想づくりだけではなく、「スモール開発」も並行して進めています。いまできる小さいこと、大きな投資がかからないことをやる。多数のアイデアの中から、もう2つ着手しています。
ひとつは「静岡移住計画」の立ち上げです。いま、多拠点居住者が増えているのをご存知ですか。全国各地を転々として仕事をしている人たちです。そんな意欲的でアイデア豊富な人たちを呼び寄せ、静岡の「関係人口」にします。そして「ここなら自分のスキルが活かせる」「自分らしく暮らせる」と実感してもらい、従来の「交流人口」ともども静岡への移住を促し、「定住人口」に結びつけたいと思っています。
まだ言えませんが、もうひとつの取り組みも進行中です。知恵と力を合わせて地域の課題を解決し、新しい感動をつくり、多様なメディアを活用して外部へどんどん発信する。そんな活動を通して生まれる静岡愛が人々を呼び込むパワーになります。
ものすごく(笑)。東急の街づくりはコンセプトが明確です。渋谷をIT企業の街にしよう、とかね。こうしたコンセプトに民間企業や公共団体を巻き込み、一緒になって推進します。自分たちだけでやるわけではありません。今回の構想づくりも、スモール開発も、私だけ、プロジェクトメンバーだけ、静鉄だけでやろうとは思っていません。
先日、入社5年目以内の80名ほどの若手に「あなたも構想づくりに参加しませんか?」とメールを配信しました。手を挙げてくれた人を対象に説明会を行い、ワークショップを開きます。今後はさらに静鉄グループ各社、他の民間企業、行政とも交流しながら、「静岡なら、こんな働き方、暮らし方ができるんですよ」と、県内はもとより県外へ、首都圏だけでなく全国へ発信していきます。
苦労は特にありません。強いて挙げるなら、やりたいことが増えて大変なことぐらい(笑)。また、キャリアの浅い私が、こんなに自由にやってもいいのかな、と不安になったりもしますが、それもまた楽しいです。気候が温暖。人がおおらか。そして程よく都会でもある。こうした静岡の魅力を広く発信したいと考えていましたので、それを実際やれているのは何ものにも替えがたいやりがいです。
その通りです。若手を中心に、みんなで知恵を出し合うことが、今後ますます必要です。研究機関やリサーチ会社、地元の企業や行政の皆さん、そして元気で前向きなこの街の人たちと、0から1を生み出したい。大切なのは、自分たち自身が楽しむことでしょう。楽しめなければ大変なことも吹き飛ばせますからね。あなたも一緒に、ここ静岡を、もっと楽しく魅力的な街にしませんか?